一般の方向け情報

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流死産絨毛・胎児組織(POC)染色体分析

胎児由来の細胞を用いて、流産や死産の原因を探索する検査です。

流死産絨毛・胎児組織染色体分析を受ける前には、医師から詳しい説明を受けてください。

検査の目的

一般に流産は全妊娠の約10~15%に発生します。原因としては胎児側要因と母体側要因に分けられますが、半数以上は胎児側の染色体異常が原因であると言われています。
流死産絨毛・胎児組織染色体分析では、染色体異常の有無やその種類を診断することができます。分析結果は流死産の原因究明の一助となるだけでなく、その後の妊娠の治療方針を考える上でも重要な情報となります。

染色体とは

人の体は小さな細胞が集まってできており、それぞれの細胞が染色体を46本持っています。精子と卵子が受精することにより、赤ちゃんは染色体を各々から23本ずつ受け継ぎます。したがって、人は下図のような2本1組となった染色体を23組、合計46本持っています。23組のうち1組は性別を決める性染色体で、女性はX染色体を2本持ち、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。染色体には人の設計図にあたる遺伝情報が含まれています。

染色体とは

染色体異常とは

「染色体異常」とは、染色体の「数」や「構造」に生じた変化です。
「数の異常」は46 本である染色体の数が増えたり減ったりする変化で、トリソミー(ある染色体が3 本ある)やモノソミー(ある染色体が1 本のみ)などがあります。例えば、ダウン症候群では21 番染色体が3 本、18 トリソミーでは18 番染色体が3 本あります。
「構造の異常」は染色体に切断が起こり構造が一部変化したもので、染色体全体として過不足が生じていないもの(均衡型)と、過不足が生じているもの(不均衡型)があります。
受精卵の段階でこれらの染色体異常があると、妊娠に至らなかったり、妊娠しても流産や死産となったりする可能性が高くなります。

染色体異常とは

検査の方法

流産手術や死産の際に得られた検体から胎盤絨毛組織や胎児組織を選別します。付着した母体細胞は洗浄して取り除き、分離した胎児由来の細胞を培養して増やします。そして十分に細胞が増えた時点で、顕微鏡で細胞内に存在する染色体を観察して、数や構造に異常が生じていないかどうかを調べます。

検査の限界

流産手術や死産の際に得られた検体から胎盤絨毛組織や胎児組織を選別します。付着した母体細胞は洗浄して取り除き、分離した胎児由来の細胞を培養して増やします。そして十分に細胞が増えた時点で、顕微鏡で細胞内に存在する染色体を観察して、数や構造に異常が生じていないかどうかを調べます。

  • 胎盤絨毛組織や胎児組織の損傷が大きく、培養しても胎児由来の細胞が十分に増えなかった場合は、分析ができないことがあります。
  • 胎盤絨毛組織や胎児組織に付着した母体細胞が、培養の際に残存していて増殖した場合は、母体の染色体が分析されて検査結果として報告されることがあります。
  • 提出された検体が母体組織のみで胎盤絨毛組織や胎児組織が見出されなかった場合は、検査を行えないこともあります。
  • 染色体の「数の異常」や「構造の異常」の多くは正確に分析できますが、微細な構造の異常や遺伝子レベルの変
    化は検出することができません。
流死産と染色体異常の関係

弊社が2003年から2007年までに行った1477 例の流死産症例を検討しました。

染色体異常の種類
63.8%に染色体異常が検出され、そのうち約95%が染色体の「数の異常」であり、「構造の異常」は約5%でした。

年齢の影響
女性の年齢が高くなるほど、胎児が染色体異常である確率が増加すると言われています。右図のように、年齢とともに流死産症例の染色体異常率は上昇しており、40歳以上では80%以上でした。また、35歳で分けると、35歳未満では染色体異常が認められた症例が 54.9%、35歳以上では75.3%でした。

検査結果別の考え方

今回の検査で検出された胎児側の染色体異常の有無や種類によって、その後の妊娠への対応は異なってきます。

染色体正常の場合

胎児の染色体異常によって流産が起こったとは考えにくく、その他の原因により流産が引き起こされたと考えられます。
ただし、染色体分析では微細な構造の異常や遺伝子レベルの変化は検出する事が出来ません。また、結果が正常女性型であった場合は、まれに混入した母体細胞のみが増殖し、胎児の状態をみていない可能性もあります。

染色体異常の場合

染色体異常が流産の原因であった可能性が高いと考えられます。そのため、その他の流産の原因となる母体側要因などの検索は必ずしも必要ではなくなります。染色体異常の種類によりその後の対応は異なります。

「数の異常」の場合

染色体異常が流産の原因であった可能性が高いと考えられます。そのため、その他の流産の原因となる母体側要因などの検索は必ずしも必要ではなくなります。染色体異常の種類によりその後の対応は異なります。

「構造の異常」の場合

ご夫婦のどちらかが、関連した構造の異常(通常は均衡型)を有している場合は、今後も同じような流産が続くことがあります。そのため、今後の妊娠のためにご夫婦自身の染色体分析を行うことが推奨されます。ご夫婦に染色体異常がなく胎児側の「構造の異常」が偶発的に生じたと考えられる場合は、流産を繰り返す可能性は低いと考えられます